機内食にサーキュラーフードを。コオロギパウダーの可能性って?
旅はいつだって刺激を与えてくれる。あまり土地勘のない場所に行けば、目に入るもの全てが新鮮に映って、どんどん新しい情報を得られる。地域の文化に根ざしていたり、時代の流れを汲み取っていたりすれば、なおさらだ。
でも、よくよく考えてみれば、旅の始まりは飛行機に乗るところから。機内でも自分の価値観を広げられるような体験ができるとしたら、その旅の充実度が変わってくるはずだ。
ZIPAIRは今の時代にあったサービスを提供するために、じつは「機内食」にも力を入れている。食分野の抱える課題を解決し得る原料を機内食に使用しているのだ。
無視してはいけない「タンパク質クライシス」と「食品ロス」
タンパク質クライシスという言葉は、ひょっとしたらどこかで耳にしたことがあるかもしれない。簡単に言えば、畜産による牛肉や豚肉、鶏肉などの供給量が追いつかず、人間がタンパク質不足になってしまう可能性のある社会問題だ。
2019年6月に発表された国連の報告書*によれば、今後30年で世界人口は77億人から97億人まで増加すると言われている。畜産には大量の水や穀物が必要となり、ここまでの人口に対して食肉を生産するとなると、環境負荷をかけすぎてしまったり、そもそも十分なタンパク質を供給できなかったりする……。
また、世界では年間約9.3億トンもの食品ロスが発生しており、その量は世界で生産されている食品の約1/3に相当するという試算もある。せっかく手間をかけて生産された野菜や果物でも、なんの使い道もなく捨てられてしまっているのだ。
*参照:国際連合広報センター https://www.unic.or.jp/news_press/info/33789/
いま注目される「サーキュラーフード」とは?
そんな2つの課題を解決し得るものとして、いま、多くの人がサーキュラーフードに注目している。これは地球資源に限りがあることを念頭に置き、これまで以上に環境負荷をかけず、そして、軽減しながら、食品ロスを有効活用した食べ物のことだ。「サーキュラーエコノミーの食べ物版」だと考えれば、分かりやすいかもしれない。
基本的にサーキュラーフードには、通常であれば捨てられてしまうような食品が原料になったり、アップサイクルされたりすることが多い。食品の焼却は多くの水分を含んでいるため多大なエネルギーが必要となり、温室効果ガス排出にもつながっているため、そのような状態に変化を与えられるのだ。
日本初!コオロギパウダーを使用した機内食
これらの状況を踏まえて、ZIPAIRは日本で初めて機内食に「コオロギパウダー」を導入している。使っているのは、徳島大学発のベンチャー企業であり、食用コオロギの品種改良、生産、原料加工、商品開発、販売を一貫して行なっている株式会社グリラスが製造した「グリラスパウダー」だ。
これは国産食用フタホシコオロギを粉末化したもので、機内食として提供している「トマトチリバーガー」と「ペスカトーレ」の原料の一部になっている。導入の背景には、グリラスパウダーがタンパク質クライシスと食品ロスの2つの課題に対する解決策だと考えられていることがある。
じつは昆虫食は食肉に代わるタンパク質の供給源として脚光を浴びている。畜産と比べて、食用昆虫の飼育は環境負荷が低いのだ。ちなみに、タンパク質クライシスの解決策のひとつとして、FAO(国際連合食糧農業機関)は昆虫食を推奨しているほど!
また、グリラスパウダーに使われている食用フタホシコオロギは雑食であり、餌を選ばなくて済む。そのため食品ロスによる原料で飼育が行われているのだ。
機内食とコオロギパウダーの掛け合わせから生まれる可能性
機内食にコオロギパウダーを使用するのは、驚きを与えてしまうかもしれない。コオロギと聞いただけで、嫌悪感を覚える人もいるかもしれない。
でも、これからの地球や環境のあり方を考えれば考えるほど、昆虫食の重要性は高まってくるし、食品ロスの有効活用法を模索しなければいけない。ZIPAIRはそんな考えのもとコオロギパウダーという選択肢を提案している。
そんな背景にも触れながら、ぜひ「トマトチリバーガー」と「ペスカトーレ」を一度味わってみてほしい。旅先で新しい価値観に触れるように、どんな可能性があるのかとワクワクしながら食べてみてほしい。
ZIPAIRの機内食で、旅の一歩めとして自分の価値観が広がる体験をするのも悪くないはずだ。